オーデマピゲのヴィンテージ時計は、コレクションとして楽しむなら「買い」、投資目的なら慎重に判断すべきです。
ロレックスやパテックフィリップに比べ、オーデマピゲのヴィンテージ市場はまだ確立されておらず、流通量が少ないことが特徴です。特にロイヤルオークのヴィンテージモデルはコレクターの間で人気が高いものの、ドレスウォッチは比較的安価に取引されています。
また、ヴィンテージモデルの価格変動が激しく、メンテナンスやパーツ供給の課題もあるため、「安いから」という理由で購入すると後悔することもあります。
本記事では、高級時計買取に携わってきた筆者が、ヴィンテージのオーデマピゲを購入する際に「何を基準に選ぶべきか」「どのモデルが資産価値を持つのか」「メンテナンスの課題は何か」といったポイントを解説します。
購入後に後悔しないためにも、オーデマピゲのヴィンテージ市場の実態を理解して、適切な判断ができるようにしておきましょう。
◆ この記事で知れること ・オーデマピゲのヴィンテージ市場と価格の現状 ・ヴィンテージ市場の今後の動向 ・価格が上がるヴィンテージモデルの特徴 ・ヴィンテージのメリットとデメリット ・選ぶべきヴィンテージモデルと避けるべきモデル ・ヴィンテージを購入する際の注意点 ・ヴィンテージオーデマピゲのメンテナンスと管理方法 |
目次
オーデマピゲのヴィンテージ市場:価格安定と下落あり
オーデマピゲのヴィンテージ市場は、「価値が安定しているモデル」と「下落傾向のモデル」に二極化しています。
◆ヴィンテージ オーデマピゲの価格帯(目安)
モデルカテゴリー | 製造年代 | 価格帯(目安) |
ドレスウォッチ | 1950~1970年代 | 40万円~100万円 |
ロイヤルオーク | 1970~1990年代 | 200万円~800万円 |
グランドコンプリケーション系 | ー | 1000万円以上 |
・価値が安定しているモデル
ロイヤルオークの初期モデルや、グランドコンプリケーション系など、コレクター需要が高いモデルは価格が安定。特に、5402ST(初代ロイヤルオーク)や15202ST(エクストラシン)は、近年の価格下落があるものの、依然としてプレミアがつきやすい傾向にあります。
・下落傾向のモデル
一方で、1950~1970年代のドレスウォッチは、オーデマピゲのブランド価値に比べて割安な価格で取引されることが多く、需要が限定的。スポーツウォッチに比べて市場の注目度が低く、資産価値という観点では慎重な判断が必要です。
価格が上がるヴィンテージモデルの特徴
オーデマピゲのヴィンテージモデルの中でも、以下のような特徴を持つものは、将来的な価値上昇が期待される傾向にあります。
◆価値上昇が期待されるヴィンテージモデルの3つの特徴
①生産数が少ない
限定生産や特別仕様モデルは希少性が高い
②現行ラインナップにないデザイン
特徴的なケース形状や文字盤デザインを持つモデルは価値が高まりやすい
③人気のムーブメントを搭載
ジャガー・ルクルト製のキャリバーや自社開発の薄型ムーブメントは評価が高い
ヴィンテージのオーデマピゲを購入する際は、価格の変動要因を理解し、長期的な視点で価値を見極めることが重要です。
オーデマピゲのヴィンテージ市場:相場調整で下落傾向
オーデマピゲのヴィンテージ市場は、近年の相場調整によって価格が下落傾向にあります。特に、2020年から2022年にかけての市場過熱の反動があり、短期的な価格上昇は期待しにくい状況です。
しかし、長期的に見ると特定のモデルに対する需要は依然として高く、今後の価格回復の可能性も十分に考えられます。
価格下落の主な3つの要因
近年、オーデマピゲのヴィンテージ市場では一部のモデルが価格下落傾向にあります。その背景には「①市場の過熱と調整」「②資産価値としての魅力の低下」「③流動性の低さ」があります。
①市場の過熱と調整
2020年〜2022年にかけて、世界的な時計市場の高騰により、ヴィンテージ市場でも価格が急上昇しました。特に投資目的での購入が増えたことで、一部の人気モデルに過熱感が生まれました。しかし、2023年以降、時計市場全体の調整が進み、投資目的の需要が落ち着いたことで、価格が安定または下落傾向に転じています。
②資産価値としての魅力の低下
かつては「買えば値上がりする」という期待があったヴィンテージ市場ですが、相場が落ち着いたことで、投資家層の関心が薄れています。特に、オーデマピゲのヴィンテージはロレックスのような流通量の多いブランドと比較すると、価格の予測が難しく、資産としての魅力が相対的に低下しています。そのため、コレクター向けの市場に戻りつつあると言えます。
③流動性の低さ
オーデマピゲのヴィンテージは、そもそもの流通量が限られているため、取引が活発なロレックスやパテックフィリップと比べると売買の流動性が低いのが特徴です。特定のモデルは市場に出回る数が少なく、需要と供給のバランスが取りにくいため、一時的な価格変動が起こりやすい傾向にあります。
オーデマピゲのヴィンテージ市場は、このような要因によって短期的な価格の下落が見られますが、すべてのモデルが影響を受けているわけではありません。次に、今後価格が上昇する可能性のあるモデルについて解説します。
価格上昇の可能性があるモデルの詳細
価格が下落している一方で、長期的に価値が高まる可能性があるモデルも存在します。特に、以下のような特徴を持つモデルは、今後の市場で再評価される可能性があります。
初代ロイヤルオーク 5402ST
- 1972年に誕生したラグジュアリースポーツウォッチの原点。
- ジェラルド・ジェンタがデザインを手がけたアイコニックなモデルで、コレクター需要が高い。
- 初期のAシリーズ(ケースバックに「A」から始まるシリアル)が特に希少で、高価格で取引される傾向がある。
- 一時的な価格調整があったものの、長期的には安定した価値上昇が期待される。
ロイヤルオーク 15202ST(エクストラシン)
- 5402STの後継モデルとして人気が高い。
- オーデマピゲが自社製ムーブメント(Cal. 7121)に切り替えたため、15202ST(Cal. 2121搭載)の生産が終了。
- 市場に流通する個体数が限られており、今後再評価される可能性がある。
- ヴィンテージ市場においては、エクストラシンの薄型ケースとクラシックなデザインが魅力。
製造数が少ない手巻きモデル(1950〜60年代)
- クラシカルなデザインと希少性から、一部のコレクターに人気。
- オーデマピゲのヴィンテージドレスウォッチは比較的手頃な価格で取引されているが、特定のモデルは将来的に価値が見直される可能性がある。
- 特に金無垢ケースや、ユニークなダイヤルデザインを持つモデルは、資産価値としてのポテンシャルが高い。
グランドコンプリケーション系
- オーデマピゲの複雑機構を搭載したモデルは、安定した人気を誇る。
- パーペチュアルカレンダーやトゥールビヨンなどの複雑機構を持つヴィンテージモデルは、比較的安定した価格帯を維持。
- 現行のコンプリケーションモデルが高騰しているため、ヴィンテージ市場でも注目される可能性がある。

ヴィンテージ市場の相場変動は常にあるものの、これらのモデルはコレクターや愛好家の間で根強い支持を受けており、長期的には資産価値が上昇する可能性が高いでしょう。
さて、次のポイントとして、ヴィンテージ時計を選ぶ際には市場の動向だけでなく、実際に所有するメリットとデメリットを理解することも大切です。
特に、オーデマピゲのヴィンテージモデルは現行品にはない魅力を持つ一方で、維持やメンテナンスの面で注意すべき点もあります。そこで、次はヴィンテージ時計のメリットとデメリットについて見ていきましょう。
ヴィンテージのメリットとデメリット
オーデマピゲのヴィンテージモデルには、現行品にはない魅力があります。クラシックなデザインやコレクション性の高さが特徴で、特定のモデルは将来的に価値が上昇する可能性もあります。
しかし、メンテナンスの難しさや部品供給の問題、防水性の低さなど、購入前に考慮すべき点も多くあります。ヴィンテージ時計を楽しむためには、これらのポイントを理解し、自分に合った選択をすることが重要です。
ヴィンテージのメリット
オーデマピゲのヴィンテージモデルは、現行品にはない魅力があるため、多くの時計愛好家やコレクターに支持されています。
1. 現行モデルにはないデザイン
ヴィンテージモデルは、当時の時代背景を反映した独自のデザインが特徴です。特に1950〜70年代のドレスウォッチは、現代のオーデマピゲにはない繊細なケースフォルムやダイヤルデザインが魅力です。また、ロイヤルオークの初期モデルも、ジェンタデザインのオリジナリティを感じられる特別な存在です。
2. コレクション性の高さと所有する満足感
生産数が限られているヴィンテージモデルは、希少価値が高く、所有すること自体に大きな満足感があります。特に、ロイヤルオークの初代モデルや限定生産の複雑機構モデルは、コレクターズアイテムとして世界中で人気を集めています。
3. 将来的に価値が上がる可能性がある
ヴィンテージ市場は変動するものの、特定のモデルは長期的に価格が上昇する傾向があります。例えば、ロイヤルオーク 5402ST(初代モデル)や15202ST(エクストラシン)は、近年の相場が落ち着いているものの、長期的に見れば希少価値の高さから再評価される可能性があります。
4. 製造の背景やストーリーがある
オーデマピゲのヴィンテージモデルには、ブランドの歴史や技術革新の過程を感じられる魅力があります。例えば、1972年に誕生したロイヤルオークは、世界初のラグジュアリースポーツウォッチとして時計業界に革命を起こしました。こうしたストーリーを持つモデルは、単なる実用品ではなく、文化的価値を持つ資産としての側面もあります。
5. 生産終了により、希少性が増す
オーデマピゲのヴィンテージモデルは、基本的に再生産されることがないため、時間が経つほど希少価値が高まります。特に、手巻きのモデルやクラシカルなデザインのドレスウォッチは、現行ラインナップでは代替品が少なく、希少性がさらに強調される傾向にあります。
ヴィンテージのデメリット
一方で、ヴィンテージならではのデメリットもあり、購入時には注意が必要です。
1. 正規の修理が難しい(スイス送りが必要なケースも多い)
オーデマピゲのヴィンテージモデルは、国内での修理対応が難しい場合があります。特にムーブメントの部品供給が終了しているモデルは、スイス本社への送付が必要になることが多く、時間やコストがかかります。
2. 部品交換が必要な場合、高額になる
ヴィンテージモデルの修理では、オリジナルパーツの交換が必要になることがあります。しかし、純正パーツの流通が限られているため、入手困難な場合や高額な費用が発生することもあります。特に手巻きや複雑機構を搭載したモデルは、その傾向が顕著です。
3. 防水性や耐衝撃性が現行モデルよりも劣る
現行の時計と比較すると、ヴィンテージモデルは防水性能や耐衝撃性の面で劣ります。例えば、1970年代以前のドレスウォッチは非防水のものが多く、ロイヤルオークの初期モデルも、現行のスポーツウォッチと比べると耐久性が低いです。実用面での制約があるため、日常使いする場合は注意が必要です。
4. 維持に手間とコストがかかる
ヴィンテージのオーデマピゲは、定期的なメンテナンスが欠かせません。特に古いムーブメントを搭載したモデルは、定期的なオーバーホールが必要で、維持にかかるコストが高くなることがあります。さらに、修理できる職人が限られているため、メンテナンスの選択肢が少なくなる点もデメリットです。
5. コンディションの個体差が大きい
ヴィンテージモデルは、過去の使用状況やメンテナンス履歴によって状態が大きく異なります。特に、オリジナルパーツが維持されているかどうかは、価値に大きな影響を与えます。外装の磨きすぎや、社外パーツの使用によって、資産価値が下がるケースもあるため、購入時には細心の注意が必要です。
6. 流動性が低い(売却時に買い手を見つけづらいことがある)
ロレックスのヴィンテージモデルと比べると、オーデマピゲのヴィンテージ市場は成熟していません。そのため、売却時にすぐに買い手が見つからないケースもあります。特にドレスウォッチ系のモデルは、需要が限られているため、短期間で売却するのが難しいこともあります。
ヴィンテージのオーデマピゲを購入する際は、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、自分の用途に合ったモデルを選ぶことが大切です。
さて、メリット・デメリットを把握した上で、次にヴィンテージモデルを購入する際に選ぶべきヴィンテージモデルと避けるべきモデルについてご紹介していきます。
選ぶべきヴィンテージモデルと避けるべきモデル
ヴィンテージのオーデマピゲを選ぶ際は、将来的な価値やメンテナンスのしやすさを考慮することが重要です。ここでは、購入を検討すべきモデルと避けるべきモデルを紹介します。
・ロイヤルオーク 5402ST(初代)
・ロイヤルオーク 15202ST(エクストラシン)
・手巻きドレスウォッチ(1950~1960年代) ✖️避けるべきヴィンテージモデル
①状態が悪い個体(リダンや改造品)
②部品供給が困難なムーブメント搭載モデル
③需要が低いモデル
おすすめのヴィンテージモデル
ロイヤルオーク 5402ST(初代)
1972年に発表されたラグジュアリースポーツウォッチの原点とされるモデル。オーデマピゲの代表作であり、時計業界に革新をもたらした1本です。
- ジェラルド・ジェンタによるデザイン
独創的なオクタゴン(八角形)ベゼルや、ビス留めデザインが特徴で、現在のロイヤルオークの基礎を築きました。ケースとブレスレットが一体化した構造も、当時としては画期的なものでした。 - 生産数が少なく、希少性が高い
初期生産は約6,000本と少なく、そのうちオリジナルコンディションを保っている個体は限られます。特にAシリーズ(最初期ロット)はプレミアム価格で取引されることが多く、コレクター間で人気があります。 - 資産価値の高さ
近年の相場では、一時的な価格調整はあったものの、長期的には上昇傾向。ヴィンテージ市場において、ロイヤルオーク 5402STの価値は今後も安定すると予想されています。
ロイヤルオーク 15202ST(エクストラシン)
初代5402STのデザインを忠実に再現した復刻モデルであり、愛好家の間で高い評価を得ています。
- 薄型ケースとクラシカルなデザイン
ケース厚8.1mmのスリムな設計で、ドレスウォッチとしても着用可能。シンプルながら洗練されたデザインは、初代モデルを彷彿とさせます。 - 価格の変動と将来性
近年の価格は一時的に下落しているものの、ロイヤルオークのアイコン的な存在であることから、長期的には安定する可能性が高いです。特に、ブルーダイヤルのモデルは需要が高く、市場での価値が維持されやすい傾向にあります。 - 実用性とコレクション性を両立
日常使いしやすいサイズ感と耐久性を備えつつ、コレクションアイテムとしての魅力も兼ね備えています。
手巻きドレスウォッチ(1950~1960年代)
オーデマピゲは元々、高級ドレスウォッチの名門ブランドとして評価されており、1950〜1960年代の手巻きモデルはクラシックな魅力を持っています。
- クラシカルなデザイン
エレガントなラウンドケースや、スリムなドーフィン針、精巧な文字盤デザインが特徴。現行モデルにはない上品な雰囲気が漂います。 - 手頃な価格帯での購入が可能
ヴィンテージ市場では比較的安価(40〜100万円)で取引されることが多く、ヴィンテージ初心者にもおすすめの選択肢です。 - フォーマルシーンにも適応
多くのモデルが金無垢ケースを採用しており、フォーマルな場面でも活躍。現行のスポーツウォッチとは異なる、クラシックな魅力を楽しめます。
ヴィンテージのオーデマピゲは、それぞれ異なる魅力を持つモデルが存在します。購入を検討する際は、自身の用途やコレクションの目的に合わせて選ぶことが大切です。次に、避けたほうがよいモデルについて解説します。
避けたほうがいいヴィンテージモデル
避けたほうがいいヴィンテージモデルについて解説していきます。
①状態が悪い個体(リダンや改造品)
ヴィンテージ時計市場では、文字盤のリダン(再塗装)や非純正パーツの使用が価値を大きく下げる要因になります。
- 正規修理を受けられない可能性
オーデマピゲの正規サービスでは、オリジナルの状態を維持していない時計に対し、修理対応を拒否することがあります。リダンされた文字盤や改造されたムーブメントを搭載した個体は、メーカー保証を受けられないことが多いです。 - 資産価値の低下
リダンや改造が施された個体は、コレクターズアイテムとしての魅力が半減するため、将来的な価格上昇も期待しにくいです。また、オリジナルのコンディションを保った個体と比較して、再販時の評価が大幅に下がる可能性があります。 - 見分け方
・文字盤のフォントがオリジナルと異なる
・針やインデックスの形状がオリジナルと一致しない
・ケースやブレスレットに過度な研磨が施されている
購入前には、専門家による鑑定や、オリジナルパーツが維持されているかどうかを慎重に確認することが重要です。
②部品供給が困難なムーブメント搭載モデル
一部のヴィンテージオーデマピゲは、すでにメーカーが部品供給を終了しているムーブメントを搭載しているため、修理の難易度が高くなります。
- 修理ができず、メンテナンスコストが跳ね上がる
ヴィンテージモデルの中には、修理の際に代替パーツが入手困難なものがあり、パーツの特注製作が必要になることもあるため、通常の修理費用よりも高額になることがあります。 - ムーブメントの種類に注意
例えば、1970年代以前の一部の手巻きモデルや、独自の特殊ムーブメントを搭載したモデルは、メーカー側で部品の在庫がなくなっているケースが多いです。 - 見分け方
・製造期間が短く、市場流通が少ないモデル
・オーデマピゲのサービスセンターに確認し、部品供給の可否を事前にチェック
長期的に使用することを考えるなら、部品供給が継続しているムーブメントを搭載したモデルを選ぶのが賢明です。
③需要が低いモデル
ヴィンテージ市場では、人気の有無が資産価値を大きく左右します。需要が低いモデルを購入すると、後々売却する際に大幅な価格下落を招く可能性があります。
- 人気が低いモデルの特徴
・生産数が多く、希少価値がないモデル
・デザイン性が低く、現行モデルと差別化できないモデル
・市場での流通が少なく、コレクター需要が低いモデル - 具体的に避けたほうがいい例
・一部の手巻きクロノグラフ(特に知名度の低いモデル)
・ケースサイズが小さすぎる(33mm以下)のモデル
・装飾性の強い特殊デザインで、汎用性が低いモデル
ヴィンテージ時計を資産価値として考えるなら、市場での需要がある程度安定しているモデルを選ぶことが重要です。
ヴィンテージのオーデマピゲを選ぶ際には、状態や修理の可否、そして市場の需要を見極めることが必要です。次に、購入時に押さえておくべきチェックポイントについて解説します。
ヴィンテージを購入する際の4つの注意点
ヴィンテージのオーデマピゲを購入する際は、時計の状態や修理履歴、市場価値を慎重に見極めることが重要です。特にオリジナルパーツの有無やメンテナンス状況は、資産価値にも影響を与えるため、細かくチェックする必要があります。
最低限、この4つはチェックすることをおすすめします。では1つずつ解説していきます。
①ムーブメントの状態
ムーブメントは時計の心臓部分にあたり、正常に作動しているかどうかが最も重要なポイントです。ヴィンテージモデルは年数が経過しているため、メンテナンス状況によって状態が大きく異なります。
- 定期的なメンテナンス履歴があるかを確認
過去に正規のオーバーホールが行われているか、メンテナンス記録が残っているかをチェックしましょう。定期的にメンテナンスされていない個体は、精度が大きく狂っていたり、内部パーツの摩耗が進行している可能性があります。 - 動作の安定性を確認
秒針の動きがスムーズか、手巻き式なら巻き上げの感触に違和感がないかをチェック。可能であれば、ムーブメントの振動数や日差の数値を計測できる店舗でチェックするのが理想です。
②ケース・文字盤のオリジナリティ
ヴィンテージ市場では、オリジナルの状態を保っているかどうかが大きな価値の分かれ目になります。特に文字盤のリダン(再塗装)や交換パーツの有無は、時計の価値を大きく左右します。
- リダン(再塗装)されていないかを確認
リダンされた文字盤は一見すると綺麗に見えますが、コレクター価値が大きく下がる要因になります。オリジナルの文字盤は経年変化により焼けや色褪せがあることが一般的ですが、それこそがヴィンテージの魅力のひとつです。 - ケースのポリッシュ(研磨)の有無
ケースが過度に研磨されていると、本来のエッジが削れ、デザインのシャープさが損なわれます。特にロイヤルオークのようなケースのカットが特徴的なモデルでは、過度な研磨による価値の低下に注意が必要です。 - 針やインデックスの状態
オリジナルの針やインデックスが交換されていないかをチェック。特に夜光塗料(ルミノバやトリチウム)が使われているモデルは、均一に経年変化しているかどうかでオリジナルの可能性を見極めることができます。
③正規修理が可能かどうか
ヴィンテージのオーデマピゲは、正規サービスでの修理が受けられるかどうかを事前に確認しておくことが大切です。
- 修理履歴の確認
過去に正規サービスセンターでの修理歴がある個体は、信頼性が高いです。一方で、非正規の修理店で改造された個体は、メーカー修理を断られる可能性があるため、購入前に履歴を確認しましょう。 - 部品供給の有無
ムーブメントの部品供給が終了している場合、修理にはスイス送り(メーカー本社での修理)が必要となり、費用と時間がかかることがあります。オーデマピゲの正規サービスで修理可能かどうか、事前に確認することをおすすめします。
④販売店の信頼性
ヴィンテージ時計の購入では、販売店の信頼性が極めて重要です。特に個人売買や無名のショップでは、偽物や改造品が紛れ込んでいるリスクがあるため、慎重に選ぶ必要があります。
- 評判の良いディーラーやオークションハウスを選ぶ
高級時計専門のディーラーや、サザビーズ、クリスティーズ、フィリップスなどの著名なオークションハウスでの購入は、真贋保証や正規修理履歴のある個体を入手しやすいため、安全性が高いです。 - 保証やアフターサービスの有無を確認
販売後の保証が付いているか、アフターサービスの内容を確認することも重要です。特にヴィンテージ時計の購入にはリスクが伴うため、一定期間の返品保証やメンテナンス保証がある販売店を選ぶのが理想的です。
ヴィンテージのオーデマピゲを選ぶ際には、ムーブメントやケースのオリジナリティ、修理の可否、販売店の信頼性を慎重に見極めることが大切です。次に、購入後のメンテナンスについて詳しく解説していきます。
ヴィンテージオーデマピゲのメンテナンスと管理方法
ヴィンテージのオーデマピゲは、現行モデルと異なり定期的なメンテナンスが欠かせません。特に、ムーブメントの精度維持やパーツの劣化防止のためには、適切なメンテナンスを実施することが重要です。ここでは、購入後に必要なメンテナンスのポイントや、日常的な管理方法について解説します。
オーバーホールの必要性
ヴィンテージモデルは長年使用されているため、オイル切れや部品摩耗のリスクが高いです。そのため、適切なタイミングでオーバーホールを行うことで、長く愛用することができます。
オーバーホールは2年経った頃から意識するのがおすすめ
- 手巻き・自動巻きムーブメント:3~5年ごと
- 複雑機構(パーペチュアルカレンダー・クロノグラフなど):2~4年ごと
ヴィンテージモデルは部品の劣化が進みやすいため、現行モデルよりも短いサイクルでのメンテナンスが必要になります。
オーバーホールを怠ると生じるリスク
- 精度が大幅に低下し、日差が大きくなる
- 潤滑油が劣化、パーツが摩耗し修理が困難になる
- ムーブメント内部に汚れが蓄積し、故障の原因になる
- 防水性能が著しく低下し、湿気やホコリの侵入リスクが高まる
オーバーホールを適切なタイミングで行うことで、これらのリスクを回避し、時計の寿命を延ばすことができます。下記記事でもオーバーホールについて解説していますので、あわせてチェックしてみてください。
▶︎【機械式3〜5年、クォーツ7〜10年】腕時計オーバーホール頻度・必要性◀︎
メンテナンス時の注意点
資産価値重視なら正規サービス、コスト重視なら時計修理店(非正規)
ヴィンテージのオーデマピゲをメンテナンスする場合、正規サービスセンターか、時計修理店(非正規)のどちらを選ぶかが大きなポイントになります。
メンテナンス方法 | メリット | デメリット |
正規サービス(スイス本社) | 純正パーツを使用できる / 修理履歴が保証される | 費用が高額 / 期間が長い(6ヶ月以上かかることも) |
時計修理店(非公式) | 費用が比較的安い / 期間が短い | 純正パーツが使えない可能性 / 修理の品質にばらつきがある |
資産価値を維持するなら正規サービスが推奨されますが、コストを抑えたい場合は信頼できる時計修理店(非正規)を選ぶのも選択肢のひとつです。

お客様の声やネットなどをみると「正規店でも、ヴィンテージ時計のオーバーホールは断られるのか?」という質問を見かけます。
再起不能でない限りは正規店でも受け付けてくれますが、スイス本社送りになることが多く、オーバーホールだけで新品時計を2本買える額…になることもあります。
特にヴィンテージは部品がない可能性が高く、新たに部品制作などを要する場合は、それなりの値段を覚悟しなければなりません。
ですから、ヴィンテージ時計を入手する際には、オーバーホールなどの維持管理も含めて購入検討をしましょう。
オーデマピゲのオーバーホール費用や、信頼できる業者の選び方について詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事を参考にしてみてください。
▶︎【高級時計4大ブランド】オーバーホールの費用相場と業者選びのポイント◀︎
そんなお手入れの手間もかかるヴィンテージ時計だからこそ、日頃の維持管理も大切です。
今日からできる管理方法と注意点
適切な保管環境
ヴィンテージ時計は湿気や温度変化に弱いため、適切な環境での保管が必要です。
- 湿度管理:湿度50%前後をキープする(乾燥剤の使用も有効)
- 直射日光を避ける:紫外線による劣化を防ぐ
- 定期的に動かす:自動巻き時計は、動かさないとオイルが固まりやすくなる
特に、ヴィンテージのロイヤルオークなどのスポーツモデルは防水性能が低いため、水分の侵入には十分注意しましょう。
着用時の注意点
- 強い衝撃を避ける:スポーツや激しい動きをする際は外す
- 磁気を避ける:スピーカーやスマホの近くに長時間置かない
- 頻繁にリューズを操作しない:経年劣化したパーツが破損するリスクがある
メンテナンスを怠ると資産価値が大幅に低下することも
適切なメンテナンスを行わずに放置すると、時計の資産価値が大幅に低下する可能性があります。
メンテナンスを怠った場合のリスク
・オイル切れ
ムーブメントの部品摩耗が進み、修理費が高額になる
・パーツの劣化
部品交換が必要になり、オリジナルパーツの入手が困難になる
・防水性の低下
湿気が侵入し、文字盤やムーブメントが腐食する
ヴィンテージ時計は部品交換が難しいことが多く、修理不能になってしまうこともあるため、定期的なメンテナンスを怠らないことが重要です。
ですから、ヴィンテージのオーデマピゲを長く愛用するためには、定期的なメンテナンスと適切な保管が不可欠です。
【まとめ】コレクション目的なら「買い」、投資目的なら「慎重に」
オーデマピゲのヴィンテージ時計は、コレクション目的なら「買い」、投資目的なら慎重な判断が必要です。ロイヤルオークの初期モデルやグランドコンプリケーション系は、コレクター需要が高く価値が安定している一方で、ドレスウォッチや一部の手巻きクロノグラフは流動性が低く資産価値としてのリスクが伴います。
これまでご紹介してきた内容について、下記に要点をまとめておきます。
◆ヴィンテージのメリットとデメリット
メリット
- 現行モデルにはないデザイン:クラシカルなデザインや独特のケース形状が魅力。
- コレクション性の高さ:希少性があり、所有する満足感がある。
- 将来的な価値上昇の可能性:特定のモデルは今後再評価される可能性がある。
デメリット
- メンテナンスの難しさ:正規修理ができず、スイス送りになる場合も。
- 部品供給の問題:純正パーツの入手が困難で、修理費用が高額になることも。
- 防水・耐衝撃性能の低さ:日常使いには注意が必要。
◆選ぶべきモデルと避けるべきモデル
おすすめのヴィンテージモデル
- ロイヤルオーク 5402ST(初代):ラグジュアリースポーツの原点で、コレクター需要が高い。
- ロイヤルオーク 15202ST(エクストラシン):初代デザインを再現し、長期的に価値が安定する可能性。
- 手巻きドレスウォッチ(1950〜60年代):比較的手頃な価格で購入でき、クラシカルなデザインが魅力。
避けたほうがいいモデル
- リダンや改造品:正規修理が受けられず、資産価値が低い。
- 部品供給が困難なムーブメント搭載モデル:修理費用が高額になるリスク。
- 需要が低いモデル:流動性が低く、売却が難しい。
◆購入時のチェックポイント
- ムーブメントの状態:定期的なメンテナンス履歴があるか。
- ケース・文字盤のオリジナリティ:リダンや非純正パーツの使用がないか。
- 正規修理が可能かどうか:メーカーで修理を受けられるか。
- 販売店の信頼性:評判の良いディーラーやオークションハウスを選ぶ。
◆ヴィンテージ市場の今後の動向
短期的には価格下落傾向が続いているものの、初代ロイヤルオークや手巻きの希少モデルは長期的な価値の上昇が期待される。一方で、市場の過熱と調整、流動性の低さが影響し、投資目的での購入は慎重に判断すべきです。
結論として、オーデマピゲのヴィンテージモデルは「何を目的に購入するか」が重要と考えられます。メンテナンスや市場動向を理解した上で慎重に選べば、長く楽しめる価値ある一本を手に入れることができるでしょう。
▶︎オーデマ ピゲ人気モデル「買取相場チャート」◀︎
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▶︎オーデマ ピゲの「最低買取保証・買取実績一覧」◀︎