ヴィンテージパテックとは、1980年代以前に製造されたパテック・フィリップの腕時計を指します。現行モデルにはないクラシカルなデザインや手作業による仕上げが魅力で、時計市場の高騰とともに注目が高まっています。
しかし、ヴィンテージ市場は価格変動が激しく購入時の注意点も多いため、しっかりと市場動向やモデルごとの特徴を理解しておくことが大切です。
◆この記事の要点まとめ
- ヴィンテージパテックとは、一般に1990年代以前に製造された希少な旧モデルを指す
- 特に人気なのは、Ref.96やRef.570などのカラトラバ、Ref.3700やRef.3800のノーチラス、Ref.130などのクロノグラフ系
- 価格が上がりやすいのは、製造本数が少なく、オリジナル性が保たれている個体
- 今後も富裕層の需要や時計投資ブームにより、ヴィンテージパテックの価格は高騰する可能性が高い
- 偽物・改造品も多く、アーカイブ取得や信頼できる販売店選びが必須
- 並行輸入でも問題ないが、資産価値を重視するなら正規OHや付属品の有無が重要
- メンテナンスは3~7年ごとのオーバーホールが推奨され、日常使用では防水・衝撃に注意が必要
では、ヴィンテージパテックの魅力や市場動向、選び方のポイントを、長く高級時計買取に携わっている筆者がご紹介していきます。
目次
- 1 なぜ今、ヴィンテージパテック?3つの人気な理由
- 2 現行モデルの高騰とヴィンテージ市場の影響
- 3 ヴィンテージパテックの定義
- 4 人気のヴィンテージパテックモデル
- 5 ヴィンテージパテックの価格推移と資産価値
- 6 ヴィンテージパテック購入時の注意点
- 7 購入後のメンテナンス・オーバーホール
- 8 まとめ
なぜ今、ヴィンテージパテック?3つの人気な理由
パテック・フィリップのような伝統あるブランドは、新品だけでなく過去の名作にも高い関心が寄せられており、下記の3つの理由がヴィンテージパテックの人気に繋がっています。
②長期的な資産価値
③独特のデザインと職人技
①時計市場全体の高騰
特にパテック・フィリップの現行モデルは正規店での入手が難しく、並行市場ではプレミア価格が付くことが当たり前になっています。結果として、「新品を定価で買えないなら、ヴィンテージを選ぼう」という流れが生まれています。
②長期的な資産価値
ロレックスやオーデマピゲと並び、パテック・フィリップは市場での評価が安定しており、ヴィンテージモデルも年々価値が上昇傾向にあります。
③独特のデザインと職人技
現行モデルにはないクラシカルなデザインや、手作業による仕上げが魅力。特に、手巻きムーブメントの仕上げや細部の作り込みは、現代の量産モデルでは得られない魅力です。
現行モデルの高騰とヴィンテージ市場の影響
パテック・フィリップの人気モデルは、新品市場での流通が極めて限られています。そのため、並行市場では「新品=プレ値」が当たり前の状況になっており、結果として「過去の名作」に注目が集まっています。
現行モデルの価格高騰がヴィンテージ市場にも波及
例えば、ノーチラスやアクアノートの価格が上がるにつれ、同じスポーツ系のヴィンテージパテックにも需要が拡大。また、ドレスウォッチの代表格である「カラトラバ」のヴィンテージモデルも再評価されています。
◆現行とヴィンテージの比較
モデル | 現行品(定価) | 並行価格 | ヴィンテージ市場価格(参考) |
ノーチラス 5711 | 約400万円 | 1,500万円超 | 旧モデル 3700が約800万円 |
カラトラバ 6119 | 約400万円 | 600万円超 | 旧モデル 96が約300万円 |
ヴィンテージパテックは「資産」であり「コレクション」でもある
ヴィンテージウォッチは、「資産としての価値」と「コレクションとしての魅力」の両面を持ちます。
資産としての価値
・価格が安定しやすい
パテック・フィリップは製造本数が限られており、特に人気リファレンスは枯渇傾向にあるため、長期的に見て価格が大幅に下がるリスクが低い。
・市場流動性が高い
ヴィンテージパテックは世界的に需要があり、売却時も比較的スムーズに取引が可能。
・歴史的価値がある
特定のムーブメントやデザインは、時計史において重要な意味を持ち、時代を超えて価値が評価される。

【ポイント】資産価値を重視するなら
人気のリファレンス(Ref.96、Ref.570、Ref.3445など)で、状態が良いものを選ぶのが鉄則です。特に、アーカイブが取得できる個体や、オリジナルパーツが揃っているものは評価が安定しやすく、将来的なリセール時にも有利です。
コレクションとしての魅力
・現行モデルにはない個性
手巻きムーブメントやエナメルダイヤル、ギョーシェ彫りなど、現代の時計にはないディテールが楽しめる。
・所有する満足感
時計愛好家の間では、「新品の現行パテックよりも、歴史を持つヴィンテージの方が価値がある」と考える人も多い。
・一つひとつが唯一無二の存在
ヴィンテージモデルは経年変化があるため、同じリファレンスでも文字盤の焼け方や針の色味が異なる。

【ポイント】コレクションとして楽しむなら
デザインや素材、ムーブメントの個性を優先し、自分が「これだ!」と思える一本を選びましょう。現行モデルにはない手作業の仕上げや、ヴィンテージ特有の味わいは、使い込むほどに愛着が湧くポイントです。
ヴィンテージパテックは資産価値としても注目されていますが、コレクション・投資・愛用のいずれの目的であったとしても、自分に合った1本を見つけることが大切です。素敵な1本を見つけるために、次のセクションではヴィンテージパテックの基本知識をご紹介していきます。
ヴィンテージパテックの定義
「ヴィンテージパテック」とは、一般的に1980年代以前に製造されたパテック・フィリップの腕時計を指します。ただし、ヴィンテージの定義に明確なルールはなく、市場やコレクターの間では「製造から30年以上経過した時計」をヴィンテージとすることが多いです。
このセクションでは、ヴィンテージパテックの定義や対象年代を整理し、よく比較される「アンティーク」との違いを明確にした上で、なぜヴィンテージパテックは高いのか? その理由を探っていきます。
1980年代以前に製造された希少なパテック・フィリップの時計を指し、手作業による仕上げや独自のデザインが魅力。・ヴィンテージとアンティークの違い
一般的に30年以上前の時計がヴィンテージ、100年以上前のものがアンティークとされ、実用性と市場価値に違いがある。
・なぜヴィンテージパテックは高いのか?
ブランドの伝統、職人技、希少性の高さが相まって、市場での評価が安定している。
ヴィンテージパテックの特徴・対象年代
パテック・フィリップは1839年の創業以来、一貫して高級機械式時計を製造しており、その長い歴史の中でさまざまな名作を生み出してきました。
特に、ヴィンテージパテックは手作業による仕上げや、時代ごとに異なるデザイン・技術が魅力であり、現行モデルとは異なる個性を持っています。
・機械式ムーブメントが主流(クォーツ化が進む1970年代以降とは異なる)
・手作業の工程が多く、仕上げの質が高い
・小径ケースが一般的(30mm〜35mm程度)
・現行モデルでは見られないデザインや仕様が楽しめる
また、時代ごとに特徴が異なるのもヴィンテージパテックの魅力の一つです。以下に、年代ごとの代表的な特徴を整理しました。
ヴィンテージパテックの魅力とは?
ヴィンテージパテックは単なる「古い時計」ではなく、その時代ごとの技術や職人技が反映された貴重なコレクションです。
✔ 現行モデルにはないクラシカルなデザイン
✔ 手作業によるムーブメント仕上げ
✔ 経年変化による独特の風合い(エイジング)
✔ 希少性の高さからの資産価値
ヴィンテージパテックを選ぶ理由は人それぞれですが、歴史や伝統を身につける楽しさ、資産としての魅力、唯一無二のデザインを持つ時計としての価値はどの時代のモデルにも共通する魅力です。
さて、ヴィンテージと同じように聞く言葉に「アンティーク」があります。お客様やネットなどでも「ヴィンテージとアンティークの違いは何?」という質問がみられますので、次ではその違いについて解説します。
ヴィンテージとアンティーク:違いは年数
時計市場では「ヴィンテージ」と「アンティーク」という言葉がよく使われますが、明確な違いがあります。
・100年以上前の歴史的価値のある懐中時計などを「アンティークパテック」
ヴィンテージ(Vintage)
・一般的に「製造から30年以上経過した時計」
・1980年代以前に製造された時計が対象
・まだ実用に耐えるモデルが多く、日常使いしやすい
・機械式時計の黄金期(1950〜1970年代)に作られたものが中心
アンティーク(Antique)
・「100年以上前に製造されたもの」が一般的な定義(国際的な基準)
・腕時計よりも懐中時計が中心(1910年代以前)
・美術品としての価値が重視される
・実用性よりもコレクション向き
ヴィンテージとアンティーク:市場での扱い
パテック・フィリップの場合、ヴィンテージウォッチは資産価値もありながら、実用性とコレクション性のバランスが取れているため人気があります。一方、アンティークウォッチは修理・メンテナンスのハードルが高く、実用品としてよりも美術的価値や歴史的価値を重視する傾向があります。
◆ヴィンテージとアンティークの市場での違い
項目 | ヴィンテージ | アンティーク |
対象年代 | 1920〜1980年代 | 1910年代以前 |
主流な時計 | 機械式腕時計 | 懐中時計 |
実用性 | 高い(日常使用も可能) | 低い(美術品・コレクション向け) |
価格帯 | 数百万円〜数千万円 | 数千万円〜億単位もあり |
メンテナンス | 可能(パーツ流通あり) | 困難(パーツ製作が必要) |
アンティークと異なる「資産価値」と「実用性」
ヴィンテージはアンティークと異なり、「資産価値」と「実用性」の両方を兼ね備えているため、現代の時計愛好家にとって人気の時計となっています。
✔ しっかりメンテナンスすれば、実用的に使える
✔ コレクションとしての価値があり、希少性が高まる
✔ 市場価格が安定し、資産価値としても期待できる
アンティーク時計は特別な用途やコレクション向けなのに対し、ヴィンテージパテックは「歴史を身につける」楽しさと「実際に使える」実用性があるのが魅力とも言えましょう。
では、そんなヴィンテージパテックを手に入れたいなぁと考えたとき、どれがいいか迷うのは仕方のないことです。ここからは人気のヴィンテージモデルをご紹介していきます。
人気のヴィンテージパテックモデル
パテック・フィリップのヴィンテージモデルは、ドレスウォッチ、スポーツウォッチ、クロノグラフ、コンプリケーションといった幅広いジャンルで展開されてきました。ここでは、ヴィンテージ市場で注目される、下記3つの代表的なモデルをカテゴリごとに紹介します。
まずは、シンプルで完成度の高いデザインが特徴の「カラトラバ」から見ていきましょう。
カラトラバ(ドレスウォッチ)
カラトラバ(Calatrava) は、1932年に登場したパテック・フィリップの代表的なドレスウォッチシリーズ。ミニマルでエレガントなデザインは、現在のドレスウォッチのスタンダードを確立しました。
特にヴィンテージモデルは、手作業による仕上げやムーブメントの美しさ、シンプルながらも洗練されたデザインが魅力で、コレクターの間でも高い評価を受けています。
下記では、代表的なヴィンテージカラトラバモデルをご紹介します。
Ref.96(カラトラバの始祖、30.5mmケース)
Ref.96は、1932年に誕生したカラトラバシリーズの原点であり、世界で初めて「ラウンド型ドレスウォッチ」の概念を確立した時計です。シンプルなラウンドケースに細身のラグ、バーインデックスを組み合わせたデザインは、その後のドレスウォッチの基礎となりました。
Ref.96の特徴
- ケースサイズ30.5mm(小型ながら洗練されたプロポーション)
- ムーブメント:Cal.12-120 / Cal.12-400(手巻きムーブメント)
- 文字盤のバリエーション(バーインデックス、ブレゲ数字、セクターダイヤルなど)
- ケース素材:イエローゴールド、ピンクゴールド、ステンレススチール
- 防水性能なし(デリケートな扱いが必要)
価格帯(ヴィンテージ市場)
・イエローゴールド:300万円〜600万円
・ステンレスモデル:700万円〜(希少性が高いため)
狙い目ポイント
・状態の良い文字盤(リダンされていないオリジナルダイヤルが重要)
・ケース痩せしていない個体
Ref.570(35mmのビッグカラトラバ)
Ref.570は、Ref.96のサイズアップ版として1938年に登場。35mmのケースサイズは、ヴィンテージドレスウォッチの中では大きめで、現代の基準でも十分な存在感があります。そのため、ヴィンテージカラトラバの中でも特に人気が高く、実用性とコレクション性を兼ね備えたモデルとして評価されています。
Ref.570の特徴
- ケースサイズ35mm(ヴィンテージカラトラバとしては大きめ)
- ムーブメント:Cal.12-120 / Cal.27SC(後期モデルはセンターセコンド搭載)
- 文字盤バリエーションが豊富(バーインデックス、アラビア数字、セクターダイヤルなど)
- ケース素材:イエローゴールド、ピンクゴールド、ホワイトゴールド、プラチナ
- 視認性が向上(大きなダイヤルが特徴)
価格帯(ヴィンテージ市場)
・イエローゴールド:700万円〜1,500万円
・プラチナモデル:1,500万円〜(希少性が高い)
狙い目ポイント
・Cal.27SC(センターセコンド)搭載モデルはより実用的
・文字盤の状態とケースのコンディションをチェック
Ref.3445(カレンダー付き自動巻きモデル)
Ref.3445 は、カラトラバシリーズ初のカレンダー機能付き自動巻きモデル。1961年に登場し、当時の最新技術を搭載した実用性の高いドレスウォッチとして人気を博しました。カレンダー機能を備えながらもシンプルなデザインを維持し、エレガントな印象を与えます。
Ref.3445の特徴
- ケースサイズ35mm(モダンなサイズ感)
- ムーブメント:Cal.27-460M(パテック初の自動巻きカレンダー搭載ムーブメント)
- カレンダー表示がシンプルなデイトウィンドウ
- ケース素材:イエローゴールド、ホワイトゴールド、ピンクゴールド、プラチナ
- 防水性のあるスクリューバックケース(他のカラトラバとは異なる特徴)
価格帯(ヴィンテージ市場)
・250万円〜600万円(素材や状態による)
狙い目ポイント
・ホワイトゴールドモデルは流通量が少なく、希少価値が高い
・オリジナルのリューズ・文字盤の状態が重要
Ref.3796(Ref.96の復刻モデル、手巻き)
1982年に登場したRef.3796 は、カラトラバのオリジナルモデルRef.96の復刻版。クラシックな30.5mmのケースサイズを継承しつつ、より精度の高い現代的なムーブメントを搭載。ヴィンテージの雰囲気を持ちながらも、普段使いしやすいモデルです。
Ref.3796の特徴
- ケースサイズ30.5mm(Ref.96のデザインを忠実に再現)
- ムーブメント:Cal.215(現行のパテック・フィリップ手巻きムーブメント)
- バーインデックスとドルフィンハンドの組み合わせ
- ケース素材:イエローゴールド、ホワイトゴールド、ローズゴールド
価格帯(ヴィンテージ市場)
・200万円〜450万円
狙い目ポイント
・ヴィンテージの雰囲気を楽しみたいが、実用性も求める人に最適
・メンテナンスしやすい現代ムーブメント搭載
カラトラバのデザイン・素材・価格帯の比較
モデル | ケースサイズ | ムーブメント | 特徴 | 市場価格 |
Ref.96 | 30.5mm | 手巻き Cal.12-120 / 12-400 | カラトラバの原点 | 300万〜600万円 |
Ref.570 | 35mm | 手巻き Cal.12-120 / 27SC | 大型カラトラバ、実用性が高い | 700万〜1,500万円 |
Ref.3445 | 35mm | 自動巻き Cal.27-460M | カレンダー機能付き、初の自動巻きカラトラバ | 250万〜600万円 |
Ref.3796 | 30.5mm | 手巻き Cal.215 | Ref.96の復刻版、クラシカルなデザイン | 200万〜450万円 |
どのカラトラバを選ぶべきか?
・オリジナルの歴史的価値を求めるなら → Ref.96
・ヴィンテージでも実用性を重視するなら → Ref.570
・自動巻きで快適に使いたいなら → Ref.3445
・ヴィンテージの雰囲気を残しつつ手巻きを楽しむなら → Ref.3796
カラトラバは、シンプルながらも洗練されたデザインと、パテック・フィリップの職人技が凝縮されたシリーズです。しかし、パテック・フィリップの魅力はドレスウォッチだけにとどまりません。
次のセクションでは、スポーツウォッチのアイコンである「ノーチラス」や「アクアノート」を中心に、ヴィンテージ市場で評価が高まっているスポーツモデルについて詳しく見ていきます。
スポーツモデル(ノーチラス)
パテック・フィリップ初のスポーツウォッチであり、1976年に誕生したノーチラス(Nautilus)は、ラグジュアリースポーツウォッチの先駆け的存在です。デザイナーのジェラルド・ジェンタによる独創的なデザインと、高級時計ブランドとしては異例のステンレススチール製ケースが特徴。現在ではヴィンテージモデルの価格が高騰し続けており、コレクターの間で特に人気が高いシリーズです。
Ref.3700(ヴィンテージノーチラスの代表格)
Ref.3700はノーチラスの初代モデルであり、現在のノーチラス人気の礎を築いた名作。誕生当時は42mmというビッグサイズが話題となり、「ジャイアントノーチラス」の愛称で呼ばれていました。ステンレススチール製のスポーツウォッチながら、極薄の自動巻きムーブメントを搭載することでエレガンスを損なわないデザインが魅力です。
Ref.3700の特徴
- ケースサイズ42mm(当時の基準では異例の大きさ)
- ムーブメント:Cal.28-255C(ジャガー・ルクルト製をベースにした極薄ムーブメント)
- ステンレススチール製ケースが中心(一部、18Kゴールドやプラチナモデルも存在)
- 2ピース構造ケース(防水性能を高めるためのデザイン)
価格帯(ヴィンテージ市場)
・ステンレススチールモデル:2,000万円〜4,000万円
・ゴールドモデル:3,500万円〜
狙い目ポイント
・ダイヤルの経年変化(トロピカルダイヤル)により価格が大きく変動
・オリジナルのブレスレットとセットであることが重要
Ref.3800(コンパクトなミッドサイズノーチラス)
ノーチラスのRef.3800は、1981年に登場したミッドサイズモデルです。初代のRef.3700は42mmと大きめだったため、より日常的に使いやすい37.5mmサイズに調整されたのがこのモデル。ケースサイズがコンパクトになったことで、ノーチラスのデザインを好みながらも、腕の細い人やフォーマルなシーンでも使いたい人に人気があります。
Ref.3800の特徴
- ケースサイズ37.5mm(Ref.3700よりもコンパクト)
- ムーブメント:Cal.335 SC(センターセコンドを搭載)
- 3ピースケース構造(よりメンテナンスしやすい設計)
- ステンレススチール、ゴールド、バイカラーなど多様なバリエーション
価格帯(ヴィンテージ市場)
・ステンレススチールモデル:1,000万円〜2,000万円
・ゴールド&スチールコンビ:1,500万円〜
・ゴールドモデル:2,500万円〜
狙い目ポイント
・ノーチラスのヴィンテージモデルの中では比較的手頃な価格帯
・ダイヤルのコンディションやブレスレットの状態が重要
スポーツモデル(アクアノート)
1997年に登場したアクアノート(AQUANAUT)は、ノーチラスよりもカジュアルなスポーツウォッチとして位置づけられています。ラバーストラップが標準装備されており、スポーティーなデザインが特徴。ノーチラスがフォーマルな場面でも使用できるのに対し、アクアノートはよりアクティブなライフスタイルに向けたモデルといえます。
アクアノート初代モデルと現行の違い
・初代アクアノート(Ref.5060A / 5060J)
- 1997年発売の初代モデル(「ノーチラスのカジュアル版」として登場)
- ケースサイズ35.6mm(現行モデルよりもコンパクト)
- ムーブメント:Cal.330 SC(センターセコンド搭載の自動巻き)
- ブレスレット:ラバーストラップが標準装備
価格帯(ヴィンテージ市場)
・Ref.5060A(ステンレス):800万円〜1,500万円
・Ref.5060J(ゴールド):1,500万円〜
・現行モデル(Ref.5167A / 5168G)
- ケースサイズが拡大(40.8mm / 42.2mm)
- ムーブメントがCal.26-330 SCにアップデート(精度向上)
- ステンレスのほか、ゴールドモデルも人気
- 防水性能120m(初代と同じ)
価格帯(並行市場)
・Ref.5167A(ステンレス):1,500万円〜
・Ref.5168G(ホワイトゴールド):2,500万円〜
ヴィンテージ市場で価値が上がるモデルは?
ヴィンテージ市場で価値が上がるモデルには、いくつかの共通点があります。
◆価値が上昇しやすい条件
- 初代モデルや生産終了モデル(特にRef.3700やRef.5060Aなど)
- 特定のダイヤルバリエーション(トロピカルダイヤルなど)
- オリジナルのブレスレットや付属品が揃っているもの
- 市場に出回る個体数が少ないもの(レアリティ)
◆今後、注目すべきヴィンテージスポーツモデル
モデル | 特徴 | 現在の価格帯 |
Ref.3700 | 初代ノーチラス | 2,000万円〜4,000万円 |
Ref.3800 | ミッドサイズノーチラス | 1,000万円〜2,000万円 |
Ref.5060A | 初代アクアノート(ステンレス) | 800万円〜1,500万円 |
Ref.5060J | 初代アクアノート(ゴールド) | 1,500万円〜 |
スポーツモデルの魅力とは?
ヴィンテージのスポーツモデルは、ドレスウォッチとは異なる魅力があります。
✔ 実用性が高く、防水機能も備えている(日常使いにも適している)
✔ 市場価値が安定しており、資産価値としても優秀
✔ ジェラルド・ジェンタのデザイン哲学が生きるノーチラスの歴史的価値
ヴィンテージのスポーツモデルは、コレクションとしても実用時計としても優れた選択肢です。次のセクションでは、さらに高度な複雑機構を搭載したクロノグラフ&パーペチュアルカレンダーモデルについて解説します。
クロノグラフ & パーペチュアルカレンダー
パテック・フィリップは、ドレスウォッチやスポーツウォッチだけでなく、クロノグラフやパーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)といった複雑機構の分野でも名作を生み出してきました。
◆クロノグラフモデルの魅力
- パテック・フィリップの手巻きクロノグラフは、特にクラシックなデザインと高度なムーブメントが魅力
- 生産本数が限られており、希少価値が高い
- ヴィンテージクロノグラフは市場価格が年々上昇傾向
◆パーペチュアルカレンダーモデルの魅力
- 「永久カレンダー」として、西暦2100年まで日付調整が不要
- クラシカルなムーンフェイズやカレンダーディスプレイが特徴
- 世界的なコレクターの間で人気があり、高額取引される

これらのモデルは、ヴィンテージ市場でも特に高い評価を受けており、パテック・フィリップの技術力とクラフツマンシップが集約された作品といえます。
代表的なヴィンテージクロノグラフ & パーペチュアルカレンダーモデル
Ref.130(初代クロノグラフ、ヴィンテージの代名詞)
Ref.130 は、1930年代に登場したパテック・フィリップ初のクロノグラフモデル。クラシックなデザインと手巻きクロノグラフムーブメントが特徴で、ヴィンテージ市場では「クロノグラフの名作」として知られています。
Ref.130の特徴
- ケースサイズ:33mm(ヴィンテージらしいコンパクトなサイズ)
- ムーブメント:Cal.13-130(手巻きクロノグラフ、精密な設計)
- ツーカウンター式(30分積算計&スモールセコンド)
- ケース素材:イエローゴールド、ローズゴールド、ステンレススチール(SSモデルは超希少)
- クラシカルなプッシャーデザイン
価格帯(ヴィンテージ市場)
・イエローゴールドモデル:2,500万円〜4,000万円
・ステンレススチールモデル:1億円超(オークション市場での取引実績あり)
狙い目ポイント
・ステンレススチールは超希少で、オークションでのみ流通
・ムーブメントがオリジナルの状態を保っているかが重要
Ref.1463(防水クロノグラフ、エクストラプッシャー)
Ref.1463 は、1940年代に登場した防水クロノグラフ。プッシャー部分にスクリュー構造を持つことで防水性を確保し、実用性を向上させたモデルとして知られています。パテックのクロノグラフの中では特にスポーティな印象を持ち、カジュアルにも合わせやすい時計です。
Ref.1463の特徴
- ケースサイズ:35mm(Ref.130よりもやや大きめ)
- ムーブメント:Cal.13-130(Ref.130と同じ手巻きクロノグラフ)
- スクリュー式プッシャーによる防水性能
- ケース素材:イエローゴールド、ローズゴールド、ステンレススチール(SSは極めて希少)
価格帯(ヴィンテージ市場)
・ゴールドモデル:3,500万円〜6,000万円
・ステンレスモデル:1億円超(非常に希少)
狙い目ポイント
・スクリューバックケースの状態を確認(過度な研磨がないかチェック)
・オリジナルのダイヤルや針の状態が良いものが高評価
Ref.3940(パーペチュアルカレンダーの名機)
Ref.3940 は、1985年に登場したパーペチュアルカレンダーモデルで、現在も多くのコレクターに愛される名作。コンパクトでエレガントなデザインながら、月・曜日・日付・ムーンフェイズを備えた複雑機構を搭載しています。
Ref.3940の特徴
- ケースサイズ:36mm(薄型ケースで上品な印象)
- ムーブメント:Cal.240Q(マイクロローター搭載)
- 3つのサブダイヤルにカレンダー表示
- ケース素材:イエローゴールド、ローズゴールド、ホワイトゴールド、プラチナ
価格帯(ヴィンテージ市場)
・イエローゴールドモデル:700万円〜1,500万円
・プラチナモデル:1,500万円〜2,500万円
狙い目ポイント
・前期(1985年〜1995年)と後期(1995年〜2007年)で文字盤デザインが異なる
・プラチナケースは特に人気が高い
Ref.3448(自動巻きパーペチュアルカレンダー)
Ref.3448 は、1962年に登場した世界初の自動巻きパーペチュアルカレンダー。それまでの手巻きモデルとは異なり、日常使いしやすい自動巻きムーブメントを搭載した画期的なモデルです。
Ref.3448の特徴
- ケースサイズ:37.5mm(ヴィンテージパテックの中では比較的大きめ)
- ムーブメント:Cal.27-460Q(自動巻き)
- ムーンフェイズ付きカレンダーディスプレイ
- ケース素材:イエローゴールド、ホワイトゴールド、プラチナ
価格帯(ヴィンテージ市場)
・イエローゴールドモデル:3,500万円〜6,000万円
・プラチナモデル:1億円超(極めて希少)
狙い目ポイント
・オリジナルのダイヤルと針の状態をチェック
・プラチナケースは超希少で、資産価値が高い
クロノグラフ & パーペチュアルカレンダーの価格比較
モデル | ケースサイズ | ムーブメント | 特徴 | 市場価格 |
Ref.130 | 33mm | 手巻き Cal.13-130 | 初代クロノグラフ | 2,500万〜4,000万円 |
Ref.1463 | 35mm | 手巻き Cal.13-130 | 防水クロノグラフ | 3,500万〜6,000万円 |
Ref.3940 | 36mm | 自動巻き Cal.240Q | パーペチュアルカレンダー | 700万〜2,500万円 |
Ref.3448 | 37.5mm | 自動巻き Cal.27-460Q | 初の自動巻きパーペチュアルカレンダー | 3,500万〜1億円超 |
価値が上がるモデルは?
クロノグラフやパーペチュアルカレンダーは、ヴィンテージ市場において今後も価値が上昇する可能性が高いカテゴリです。特に以下のポイントを押さえたモデルは、今後の市場でも注目されるでしょう。
価値が上がりやすい3つのポイント
①希少性が高いリファレンス
・Ref.130 ステンレススチールモデル(オークションで高額落札の実績)
・Ref.1463 防水クロノグラフ(スクリュープッシャー仕様の希少性)
・Ref.3448 プラチナケース(製造数が極めて少ない)
②オリジナルのコンディションが保たれている個体
・ダイヤルがオリジナルのまま(リダンされていない)
・針やプッシャーなどのパーツが当時のまま
・オーバーホール歴がしっかり管理されている
③歴史的な価値が高いモデル
・パテック・フィリップ初のクロノグラフ(Ref.130)
・初の自動巻きパーペチュアルカレンダー(Ref.3448)
・現行のデザインにも影響を与えた象徴的なモデル
市場での取引実績が高騰しているモデル

過去5年のオークションデータを見ると、パテック・フィリップのクロノグラフとパーペチュアルカレンダーは確実に価格が上昇しています。特にゴールド素材よりもステンレススチールやプラチナモデルの伸び率が高い傾向があります。
◆今後さらに価値が上がると予想されるモデル
モデル | 価値上昇の理由 | 価格推移(5年前 → 現在) |
Ref.130 SS | ステンレススチールが極めて希少 | 5,000万円 → 1億円超 |
Ref.1463 SS | 防水クロノグラフの市場価値が上昇 | 3,000万円 → 6,000万円 |
Ref.3940 | パーペチュアルカレンダーの名機として再評価 | 500万円 → 1,500万円 |
Ref.3448 PT | 初の自動巻きパーペチュアルカレンダー | 8,000万円 → 1.5億円超 |
ヴィンテージパテックは、コレクションとしての魅力だけでなく、資産価値の面でも年々評価が高まっています。では、過去数年の価格推移を振り返りながら、なぜヴィンテージパテックが値上がりを続けるのか、そして今後の市場動向について詳しく見ていきましょう。
ヴィンテージパテックの価格推移と資産価値
ヴィンテージパテック・フィリップは長期的に見ても資産価値が高い時計として知られています。市場の需要の高まりやブランドの価値上昇により、過去数年で価格が大きく変動しています。
本セクションでは、代表的なモデルごとの価格推移を整理し、なぜヴィンテージパテックが値上がりするのか、その要因と将来の見通しについて考察します。
各モデルの価格推移
「カラトラバ Ref.96」「ノーチラス Ref.3700」「クロノグラフ Ref.130」の価格推移を表にしました。
※数値は筆者が取得した内容によることと、取得年に限界がありますので参考程度でご覧ください。
カラトラバ Ref.96の価格推移
カラトラバ Ref.96は、1932年に登場したパテック・フィリップの原点ともいえるドレスウォッチです。シンプルで完成されたデザインが評価され、ヴィンテージ市場でも根強い人気があります。
◆カラトラバ Ref.96の価格推移
時期 | 価格(円) | 特徴 |
2021年頃 | 1,470,000 | コレクター層の需要増加開始 |
2023年9月 | 2,137,000 | 短期的な下落 |
2023年10月 | 2,486,000 | 前月比+16.33% |
2024年3月26日 | 1,746,200 | 最大下落(-36.39%) |
2024年11月4日 | 3,249,420 | 最大上昇(+255.63%) |
2024年11月28日 | 6,980,000 | 過去最高値 |
2025年2月 | 5,550,000 | 安定した相場に |
価格変動の背景
- 2021年以降の急騰:カラトラバ Ref.96は、クラシックなデザインの需要が高まり、コレクター市場でも人気が上昇。
- 2024年の乱高下:ヴィンテージ市場全体の影響を受け、一時的な調整局面に。特に3月に大幅な下落が見られるが、その後年末にかけて再上昇。
- 2025年の安定化:供給量の減少と、安定した需要により価格が落ち着く。
ノーチラス Ref.3700の価格推移
スポーツウォッチとして絶大な人気を誇るノーチラス Ref.3700も、ヴィンテージ市場で急激な価格上昇を遂げています。
◆ノーチラス Ref.3700の価格推移
時期 | 価格(円) | 特徴 |
1976年 | 約1,600,000 | 発売時の定価 |
2010年9月 | 約2,000,000 | コレクター需要が増加 |
2018年3月 | 約7,990,000 | 4年間で2,115万円上昇 |
2018年10月 | 約8,500,000 | 中古市場の高需要 |
2019年12月 | 約7,500,000 | 短期的な下落傾向 |
2022年3月 | 約29,150,000 | 4年間で364.74%上昇 |
2024年2月 | 約20,018,800 | 現在の平均価格 |
価格変動の背景
- 2010年以降の人気上昇:ジェラルド・ジェンタのデザインが再評価され、ヴィンテージノーチラスの価値が上がる。
- 2018年以降の爆発的上昇:生産終了の影響で、5711とともにノーチラス全体の市場価格が高騰。
- 2022年のピーク:プレミアム価格がつき、過去最高値に達する。
- 2024年の調整:一部の高騰モデルが価格調整されるが、引き続き高水準を維持。
クロノグラフ Ref.130の価格推移
パテック・フィリップのクロノグラフモデルも市場で高い評価を受けています。特にRef.130はヴィンテージクロノグラフの代表格とされ、希少性が非常に高いモデルです。
◆クロノグラフ Ref.130の価格推移
時期 | 価格(円) | 特徴 |
2007年7月 | 14,850,000 | 過去最高値(当時) |
2023年頃 | 10,150,000 〜 33,835,148 | 製造年・素材差異あり |
2023年12月 | 12,980,000 | 市場の中央値 |
価格変動の背景
- 2000年代のクロノグラフ人気:ヴィンテージクロノグラフ市場が成熟し、コレクター需要が高まる。
- 2020年代の投資対象化:クロノグラフは機械的な複雑さから高級時計市場での評価が高まり、価格が上昇。
- 素材・ダイヤル差:特にローズゴールドやセクターダイヤルはプレミアム価格がつきやすい。
ヴィンテージパテックが値上がりする5つの要因
ヴィンテージパテック・フィリップの価格は、過去10年以上にわたり着実に上昇しており、特にここ数年は市場の変動とともに急騰する傾向にあります。その背景には、複数の要因が絡み合っています。本セクションでは、価格上昇の主な理由を整理し、今後の市場動向を考察します。
①供給が限られている(市場に出回る数が少ない)
・生産終了による希少価値
ヴィンテージパテックはすでに生産が終了しており、新たな供給がないため市場価値が高まる一方。
・コレクターによる長期保有
良好な状態の個体はコレクターが長期間保有するため、売却の機会が少なく流通量が減少。
②ブランドのプレミアム化(ステータスの向上)
・「資産価値の高い時計ブランド」という認識
パテック・フィリップは、「親から子へ受け継ぐ時計」としてのブランド価値を確立。
・富裕層の需要拡大
高級時計が投資対象として注目され、特にノーチラスやカラトラバの需要が急増。
③生産終了モデルの希少性と「最後の機械式」
・手作業による仕上げが特徴
1960〜70年代の手巻きムーブメントは「二度と作られない機械式の傑作」として評価。
・ノーチラス5711の生産終了による影響
現行ノーチラスの価格高騰に伴い、ヴィンテージモデル(Ref.3700、Ref.3800)も値上がり。
④コレクター市場の拡大(投資対象化)
・高級時計の投資ブーム
「値崩れしにくい」資産として注目され、パテック・フィリップの人気が高まる。
・オークション市場の影響
クリスティーズやサザビーズでの高額落札が相場を押し上げる要因に。
⑤インフレと資産防衛(経済要因)
・インフレ時の安全資産としての需要
金やプラチナと同様に、高級時計が資産価値の保全手段として注目されている。
・富裕層の資産分散戦略
株式・不動産に代わる「代替資産」として、高級時計の市場が拡大。
ヴィンテージパテックの価格上昇は単なる「流行」ではなく、希少性・ブランド力・投資価値・経済要因といった多くの要素が絡み合った結果です。特に、近年のインフレや投資市場の拡大によって、高級時計の価値がますます上がる可能性が高まっています。
将来の価値はどうなる?(市場動向の予測)
ヴィンテージパテックの市場は、長期的な価格上昇が見込まれる一方で短期的な調整リスクもあります。今後の市場動向を考察します。
① 需要と供給のバランス
- 供給の減少
コレクターによる長期保有が進み、状態の良い個体は市場に出回りにくくなる。 - 需要の拡大
アジア市場(特に中国・香港)での富裕層増加により、さらなる価格上昇が期待される。
② 投資対象としての定着
- 時計市場の成熟化
高級時計が「資産」としての価値を確立し、投資家からの注目が続く。 - オークション市場の影響
クリスティーズやサザビーズでの落札価格の高騰が、今後の価格基準を引き上げる可能性。
③ モデルごとの将来価値予測
- さらに価格が上がる可能性が高いモデル
- カラトラバ Ref.96 & Ref.570(歴史的価値が高い)
- ノーチラス Ref.3700(ラグジュアリースポーツウォッチの象徴)
- クロノグラフ Ref.130 & Ref.1463(生産本数が極めて少ない)
- パーペチュアルカレンダー Ref.3940 & Ref.3448(複雑機構モデル)
- 比較的安定するモデル
- カラトラバ Ref.3796(復刻モデル)
- ノーチラス Ref.3800(ミッドサイズ)
④ 短期的なリスク要因
- 市場の調整
近年のバブル的な価格上昇により、一部モデルは一時的な価格調整が入る可能性。 - 偽物・改造品の増加
「完全オリジナルの個体」かどうかが、今後の価格を左右する重要な要素に。

ヴィンテージパテックは、長期的には希少性・ブランド力・投資価値の高さから価格上昇が続くと考えられますが、短期的な市場変動を見極めながら慎重に選ぶことが大切です。
ヴィンテージパテック購入時の注意点
ヴィンテージパテックの購入は、資産価値のある時計を手に入れる一方で、リスクも伴うのも事実です。市場には偽物や改造品も存在し、正規品との価格差やアーカイブの有無が重要な判断基準になりますが、結論としては価格を重視するなら並行輸入品、真正性やアフターサービスの安心感を求めるなら正規品がおすすめです。
では、さらに購入時に注意すべきポイントを詳しく解説していきます。
偽物・改造品に注意
ヴィンテージパテック・フィリップをは、高額なモデルほど巧妙に作られた偽物が市場に出回っており、見分けるのが難しくなっています。また、一見オリジナルに見える個体でも、文字盤や針、ムーブメントのパーツが交換されていることも少なくありません。
◆偽物・改造品を見極めるためのチェックポイント
チェックポイント | 確認すべきポイント | 偽物・改造品の可能性が高い例 |
ムーブメントの刻印 | シリアルナンバーやブランド刻印のフォント・深さ | フォントが不自然、刻印が浅い、位置がズレている |
ケースの仕上げ | エッジの仕上げ、ポリッシュの状態 | 磨きすぎによる丸み、刻印が消えかかっている |
文字盤のロゴ・フォント | 「PATEK PHILIPPE GENEVE」の位置や書体 | 微妙にフォントが違う、インデックスのズレ |
裏蓋の刻印 | 純正の深い刻印 | 浅い刻印、異なる書体の刻印 |
針やインデックス | ヴィンテージならではのエイジング状態 | 新しすぎる針や夜光塗料の色が不自然 |
販売証明書・保証書 | 正規店・オークションの取引履歴 | 証明書の欠如、曖昧な来歴 |
よくある改造(ダイヤルリフィニッシュ・パーツ交換)
ヴィンテージパテックでは、修理やメンテナンスの過程でパーツが交換されることがありますが、そのすべてが正規のものとは限りません。特に、以下のような改造が施された個体には注意が必要です。
❌ ダイヤルリフィニッシュ(再塗装):文字盤の塗装を再加工したもの。オリジナルの質感やフォントと異なることがある。
❌ 針やインデックスの交換:オリジナルと違う形状や夜光塗料が使われていることがある。
❌ ムーブメントの交換・修正:純正の部品ではないパーツが使用されている場合、価値が大幅に下がる。
信頼できる販売店の選び方
✔ 歴史ある専門店で購入:老舗のヴィンテージ専門店や正規販売店での購入が望ましい。
✔ オークションハウスの活用:クリスティーズやサザビーズなどのオークションでは、事前に真贋のチェックが行われているため、信頼度が高い。
✔ 第三者の鑑定を受ける:購入前に、専門家による鑑定を依頼するのも一つの方法。
並行輸入 vs. 正規品
ヴィンテージパテックを購入する際、並行輸入品と正規品のどちらを選ぶかは重要なポイントです。それぞれにメリット・デメリットがあるため、事前に理解しておきましょう。
◆並行輸入と正規品の違い
項目 | 並行輸入 | 正規品 |
価格 | 比較的安い | 高め |
選択肢の豊富さ | 希少モデルも流通 | 正規ルートのみ |
真正性の保証 | 販売店次第(要確認) | 100%保証あり |
アフターサービス | 一部制限あり | 公式のサポートが受けられる |
保証書の有無 | 付属しない場合も | すべて付属 |
リスク | 偽造品や改造品の可能性 | なし |
並行輸入のメリットとデメリット
⭕️ メリット
- 希少なモデルが手に入りやすい
- 正規品よりも価格が抑えられていることが多い
- 日本国内だけでなく、海外の販売店も選択肢に入る
❌ デメリット
- 保証が付かないことがある(店舗独自の保証のみ)
- 偽造品や改造品が紛れている可能性がある
- 正規のアフターサービスを受けられない場合がある
正規品のメリットとデメリット
⭕️ メリット
- 本物の保証がある(正規販売店経由の証明あり)
- メーカーの公式保証やメンテナンスが受けられる
- 真贋のリスクがゼロに近い
❌ デメリット
- 並行輸入品と比べて価格が高い
- 流通量が少なく、選択肢が限られる
- 入手までに時間がかかることがある
並行店で買う場合のチェックポイント
ヴィンテージパテックを購入する際には、並行輸入品と正規品の違いを理解し、自分の目的に合った選択をすることが大切です。
✔ 保証の有無:並行輸入でも保証があるかチェック
✔ アーカイブの有無:ヴィンテージならアーカイブが取得可能か
さて、ヴィンテージパテックを購入しようと考えた際、意識しておかなければならないのはメンテナンスです。
適切なケアを行うことで、資産価値を維持しながら長く愛用することができますので、次は、日常のケアからオーバーホールの費用や頻度についてご紹介します。
購入後のメンテナンス・オーバーホール
ヴィンテージパテック・フィリップは、適切なメンテナンスを行うことで何十年にもわたり使い続けることができます。ここでは、日常のケアとオーバーホールの基本についてご紹介しますが、以下のポイントを押さえておきましょう。
①防水・衝撃・保管に注意し、定期的にゼンマイを巻くことが重要
②オーバーホールは3~7年ごとが目安
③資産価値を重視するなら正規OH、オリジナル性を維持するなら社外OHを選択
④クロノグラフやパーペチュアルカレンダーは特に定期的なメンテナンスが必要
日常使いのポイント
ヴィンテージモデルは現行品と比べて繊細なため、日々の取り扱いに注意が必要です。
防水に注意
- ヴィンテージモデルは防水性能が低く、湿気や水分に弱い。
- 手洗いや雨の日の使用は避け、水に濡れたらすぐに拭き取る。
衝撃を避ける
- 耐震機構がないモデルも多く、強い衝撃でムーブメントにダメージが入る可能性がある。
- 机にぶつける、落とすといったミスを避けるため、取り扱いは慎重に。
保管環境に配慮する
- 高温多湿を避け、乾燥剤を入れたケースや時計専用ボックスで保管する。
- 直射日光の当たらない場所に置くことで、文字盤の変色を防ぐ。
ゼンマイを定期的に巻く
- 長期間動かさないとオイルが固まり、ムーブメントの精度が落ちる。
- 少なくとも1ヶ月に1回はゼンマイを巻いて動かしておく。
リューズ操作の注意点
- ねじ込み式リューズでない場合は、強く押し込まない。
- 時刻合わせは夜間(21時~3時)を避ける。(カレンダー機構が破損する恐れがある)
- 手巻きモデルはゼンマイを巻きすぎない。(適度な巻き上げで止めることが重要)
オーバーホール費用と頻度
オーバーホールの主な目的は「ムーブメント内の汚れや劣化したオイルの除去」「部品の摩耗チェックと必要な交換」「精度の調整」があります。ヴィンテージパテックは、オーバーホールを行うことで性能を維持できて資産価値の低下も防げますので意識していきましょう。
オーバーホールの頻度
・ドレスウォッチ(カラトラバなど):5~7年ごと
シンプルなムーブメントのため、比較的長期間メンテナンスなしでも問題ないが、定期的な点検が推奨される。
・クロノグラフ(Ref.130、Ref.1463など):4~6年ごと
クロノグラフ機構は複雑なため、部品の摩耗が早く、オーバーホールの間隔は短め。
・パーペチュアルカレンダー(Ref.3940、Ref.3448など):3~5年ごと
カレンダー機構のパーツが多く、定期的なメンテナンスが不可欠。
オーバーホールの費用相場
- ドレスウォッチ(カラトラバなど):15万~25万円
- クロノグラフ(Ref.130、Ref.1463など):30万~50万円
- パーペチュアルカレンダー(Ref.3940、Ref.3448など):40万~60万円
このようにオーバーホールも安いものではないので、中には正規店ではなく、非公式の修理店でお願いしようと考える方もおられるかと思います。
考え方としては、資産価値を重視する場合は正規店でオーバーホールを受けましょう。パテック・フィリップ正規店でオーバーホールを受けると「国際サービスギャランティー」が発行されるため再販時に有利になります。
資産価値ではなく、オリジナルの状態を維持したい場合は、非正規店の修理店が良いでしょう。なぜなら、正規店でのオーバーホールではパーツ交換が必須になることが多くなるからです。非正規店でのオーバーホールであれば、元の部品を残せることもありますので、事前に確認してください。
◆正規店と非正規店のオーバーホールの違い
項目 | メーカーOH(正規) | 社外OH(独立系修理工房) |
メリット | 純正パーツ使用、資産価値維持 | 費用が安く、オリジナルパーツを残せる |
デメリット | 高額、オリジナルパーツの交換が必須の場合あり | ブランドの公式保証なし、パーツ品質に差がある |
所要期間 | 3~6ヶ月(スイス送りは1年以上) | 2~3ヶ月 |
さらにオーバーホールの費用や頻度など、詳細を知りたい方は下記記事も合わせてご覧ください。
▶︎【機械式3〜5年、クォーツ7〜10年】腕時計オーバーホール頻度・必要性◀︎
▶︎【高級時計4大ブランド】オーバーホールの費用相場と業者選びのポイント◀︎
まとめ
ヴィンテージパテック・フィリップは、単なる時計ではなく職人技・歴史・資産価値が融合した特別な存在です。本記事では、ヴィンテージパテックの魅力や価格推移、選び方、メンテナンスまで詳しく解説しました。ここで、要点を振り返りましょう。
✔ 現行モデルにはないクラシカルなデザイン
✔ 手作業による高品質な仕上げ
✔ 希少性が高く、資産価値が期待できる
✔ ドレスウォッチ(カラトラバ):Ref.96、Ref.570、Ref.3445 など
✔ スポーツモデル(ノーチラス・アクアノート):Ref.3700、Ref.3800 など
✔ クロノグラフ & パーペチュアルカレンダー:Ref.130、Ref.3940 など
✔ 過去10年以上、ヴィンテージパテックの価格は上昇傾向
✔ 供給が限られているため、状態の良い個体は希少
✔ ブランドのプレミアム化により、富裕層の需要が拡大
✔ 偽物や改造品に注意(ダイヤルリフィニッシュ・パーツ交換など)
✔ 並行輸入と正規品の違いを理解する(メリット・デメリット)
✔ アーカイブの取得が価値に影響するため、可能なら取得する
✔ 防水・衝撃に注意し、適切な保管を心がける
✔ オーバーホールは3~7年ごとに実施
✔ 資産価値を守るなら正規OH、オリジナル性を維持するなら社外OHも検討
あなたにとってのヴィンテージパテックとは?
ヴィンテージパテックは、資産価値・コレクション・愛用品としての魅力を兼ね備えています。
✔ 投資目的で購入するなら → 市場価値の安定した人気リファレンスを選ぶ
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