パテックフィリップのオーバーホールでは、ムーブメントやケースの状態を総合的に判断し、摩耗や劣化が進んだ部品を交換します。
交換対象となる主な部品は、ムーブメントの駆動系・潤滑系のパーツ、防水部品、消耗品などが含まれます。
・時計の耐久性や精度を維持するため、ムーブメントの消耗部品や防水シールなどが交換されます。
・特に、主ゼンマイ、歯車、リューズ、パッキンなどは、長年の使用で劣化が進むため、オーバーホール時の交換が推奨されます。
・クォーツモデルでは、電子回路の交換が必要になることもあります。
以下、オーバーホール時に交換される主な部品のご紹介です。
① 主ゼンマイ(メインスプリング)
機械式時計の動力源となるゼンマイは、長期間使用すると金属疲労が進み、巻き上げ効率が低下するため交換が推奨されます。
劣化するとパワーリザーブが短くなり、精度にも影響を与えます。
② 歯車・歯車軸(ギアトレイン)
ムーブメント内部の歯車は、摩耗や変形が進むと精度が低下するため、必要に応じて交換されます。
特に、長期間メンテナンスをしていない時計では、歯車の摩擦による金属粉が発生し、ムーブメントの動作に影響を与えることがあります。
③ ルビー(軸受け・ジュエルベアリング)
機械式時計のムーブメントには、摩擦を抑えるために人工ルビーが使用されていますが、長期間使用すると摩耗し、回転軸の安定性が損なわれるため交換されることがあります。
ルビーが摩耗すると、歯車の動きがスムーズでなくなり、時間のズレが発生することがあります。
④ リューズ・巻き芯(クラウン・ステム)
リューズ(竜頭)は、時計の操作時に最も摩耗しやすい部品の一つです。使い続けるとネジ山が摩耗し、防水性が低下するため、オーバーホール時に交換されることがあります。
⑤ パッキン・ガスケット(防水シール)
防水時計では、ムーブメントを湿気や水分から保護するためのパッキンが使用されていますが、経年劣化によって硬化し、気密性が低下します。オーバーホール時には、新しい防水パッキンに交換し、防水性能を維持します。
⑥ ヒゲゼンマイ・テンプ(調速機構)
時計の精度を決める重要なパーツであるヒゲゼンマイやテンプは、摩耗や衝撃によって変形することがあり、交換が必要になることがあります。
わずかなズレでも精度に大きく影響を与えるため、慎重に調整・交換されます。
⑦ 文字盤・針(必要に応じて)
文字盤や針は通常のオーバーホールでは交換されませんが、ダメージや腐食がある場合は交換可能です。経年変化による変色が激しい場合、オリジナルの雰囲気を維持するために、交換を希望しないユーザーもいます。
⑧ クォーツ時計の電子回路(クォーツモデルのみ)
パテックフィリップのクォーツモデルでは、電子回路が故障すると交換が必要になります。
電池漏れによる基板の腐食や回路のショートが起こることがあり、修理が難しい場合はムーブメントごと交換されるケースもあります。
時計の健康診断ともいえるオーバーホール。その必要性や相場を知るには以下の記事も参考にされてください。
▶︎【高級時計4大ブランド】オーバーホールの費用相場と業者選びのポイント◀︎
▶︎【機械式3〜5年、クォーツ7〜10年】腕時計オーバーホール頻度・必要性◀︎